一人親方が労災事故で仕事ができないほどの怪我をしてしまった場合、一定期間仕事を休業することになります。
正社員と違い一人親方は仕事に穴を開ければその分収入が減ってしまいます。
この場合でも労災保険に加入しておけば、休業した分収入の補填があります。これが労災保険の休業補償です。
一人親方の労災保険でも休業補償が給付されます。
仕事中の怪我(業務災害)もしくは通勤途中の怪我(通勤災害)によって、止むを得ず休業することになった場合に給付されます。
ただし怪我をして仕事を休業したからといって常に補償されるものではなく、全部労働不能である必要があります。
その条件や金額などについて見てみましょう。
一人親方労災の休業補償の条件
一人親方の労災保険は一般的な労災保険と比べると、条件がやや異なります。
業務災害や通勤災害においては、請負契約に基づく業務である必要があり、その他にも補償されるための条件がございますので確認しておきましょう。
業務災害とは
業務災害とは、業務中の災害のことであります。
ひとつ条件として請負契約に基づく業務中の事故での怪我が対象となります。
言い換えれば事業主としての怪我では補償されないということ。
簡単にいえば一人親方として、元請け会社の現場で作業している途中であったり、その現場に対する作業を自宅や自工場でやっている場合の怪我に限るということ。
1つの工事を施主から直接契約をもらい仕事をしている場合には労災の休業補償の対象にはなりませんのでご注意ください。
通勤災害とは
一人親方労災保険にも通勤災害が適用されます。
通勤災害とは文字通り通勤中の事故での怪我のことをさします。
ここでいう「通勤中」とは、自宅から現場までの合理的な最短距離の経路です。
その経路上での事故のみ労災では補償をされることになっております。
もしそのルートから外れた道での事故では、通勤災害ではありませんので休業補償は給付されません。
そしてこれも業務災害とおなじく請負契約に基づく通勤でないと補償の対象ではありませんのでご注意ください。
※ちなみに、現場から現場への移動時の事故は通勤災害ではなく労災事故になります。
全部労働不能
さらに上記の災害の条件の他に、休業補償を給付されるには全部労働不能という条件があります。
全部労働不能とは、入院中もしくは通院中で業務を遂行できない状態であることをいいます。
もし仮に少しでも仕事ができるのであれば、休業補償を給付されることはありません。
医師との相談が必要です。
一人親方の休業補償の金額
一人親方の休業補償の金額は、休業4日目から給付基礎日額の6割を給付されます。
給付基礎日額とは、労災に加入する際に加入者が任意で選択するもので、労災保険加入者の年収から加入者が任意で選ぶものです。
種類は
3,500円
5,000円
15,000円
20,000円
などから選択できます。
※加入団体によっては、10,000円以上の加入条件として所得証明の提出が必要な場合があります。
休業補償の給付額はこの給付基礎日額の6割となっています。
休業4日目から働けない期間、休業補償が受け取れるということです。
しかし、3日間は補償されないため、必要に応じて任意の民間保険への加入も視野に入れましょう。
給付基礎日額の設定について
休業補償はこの給付基礎日額の6割が支払われるので、給付基礎日額が高ければ高いほど、休業補償も高くなります。
ただし給付基礎日額を高く設定すれば、休業補償も高くなりますが、その分保険料もあがります。
ですので労災加入時には、ご自分の年収にあった給付基礎日額を選ぶようにしてください。
※また16,000円以上の給付日額につきましては、労働局の指導により確定申告の写しの提出が必要です。
プロフィール 社会保険労務士 一人親方労災保険コンサルタント 埼玉労災一人親方部会 理事長 一般社団法人埼玉労災事業主協会 代表理事
1962年生まれ。立命館大学産業社会学部卒。一部上場メーカー勤務を経て20代で独立。以来社労士歴30年、労災保険特別加入団体運用歴10年。マスメディアのコメント、インタビュー掲載歴多数。本人はいたって控えめで目立つことは嫌い。妻、ネコ3匹と暮らす。
【埼玉労災一人親方部会のこと】
一人親方様の人生に寄り添う団体を目指して日夜奮闘しています。一人親方様にどんな有意義なサービスを展開するか試行錯誤の毎日です。労災事故の対応は当然のこととして、事故がなくても加入して良かったと思って戴ける団体運営にしていきたいと思います。